宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』は、アメリカでは”The Boy and the Heron”というタイトルで公開され、大ヒットすると共に数多くの賞に輝きました。
主人公の眞人が異世界へ引き込まれるのですが、そこは眞人の曾お爺さんが過去に同じく引き込まれて、本の読み過ぎでオカシクなってしまっています。
私は、画家のゴッホが精神に異常をきたしながらも、入院しながら絵を描き続けたことや、作曲家のセルゲイ・ラフマニノフが精神科医の治療により回復して、音楽家としての成功を取り戻したことなどを思い出しました。
天から来た異世界の中は、眞人の精神世界の表れの様でもあり、生物の循環を表している様な描写もあります。解釈は観客によって様々でしょうが、それを可能にする余白を残しているというよりも、余分な説明を排除しているように私には思えました。
深遠な魂の持ち主による葛藤とそれを乗り越える主人公は、他の宮崎作品とは異なり、絶対的な仲間はいません。導き手とも言えるアオサギでさえ、眞人の決断に殊更影響を与えず、眞人一人でこれを乗り越えようとします。
宮崎駿監督がこういった精神的危機や葛藤を経験したかどうかは別にしても、素晴らしく、独創的なクリエイターならではの心象風景が映し出されているかのようです。
みーちゃんさん 56歳 男性