マーラーのアダージョ

1971年の映画「ベニスに死す」は、子供の頃から何度もテレビで放映されてきた。恐らく、巨匠ヴィスコンティ監督の作品の中では日本人が受け入れやすいからではないかな?
ヴィスコンティの映画は、そのストーリー以上に音響や視覚的な要素が強く、この作品もトーマス・マンの原作の主人公の内省や蔓延するコレラに関する説明は極めて僅かで、その反面、原作にはない既に亡くなっている妻子との回想シーンが多くみられます。

若い頃にこの作品を観たときは、初老の男性の滅びゆく身体と、美少年の若々しさとの対比の映画くらいにしか思えなかったのですが、今になって原作を読んでから改めて観てみると、バイセクシャルの男性の盲目的な恋心と、他人からの視線を理解しようとする美少年の戸惑いをはらんだ視線に、陶酔や倒錯といった言葉が浮かびます。

内面に美を創造する芸術家と、その美の姿形を持って実在する人との出会いと永遠の別れの物語です。

みーちゃんさん 55歳 男性

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